
老人ホームでの食事は、利用者様の健康を支えるだけでなく、日々の生活の楽しみのひとつでもあります。
そんな食事の時間をより充実したものにする取り組みとして、多くの施設で取り入れられているのが「セレクト食」です。
セレクト食には、一般的には次のようなメリットがあると言われています。
- 自分でメニューを選ぶことで、食事への意欲や楽しみが高まる
- 「今日はどちらにしようかな」と考える事で、自己決定の機会につながる
- 好みに合わせた食事を選べるため、満足度の向上が期待できる
- 利用者様同士や職員との会話のきっかけになり、コミュニケーションが活発になる
このようなメリットが期待されるセレクト食ですが、実際に実施した施設ではどのような変化があったのかご紹介させていただきます。
セレクト食にすると、喫食量は増える?
「好きなメニューを選べることで、食事量は増えるのかな?」と思われる方も多いかもしれません。
実際に実施してみると、喫食量自体は通常の給食提供のときと比べて大きく変わる印象はありませんでした。
しかし、それ以上に感じたのが、会話のきっかけ(利用者様同士、利用者様・職員様間)が増え、よりコミュニケーションが活発になったことです。
「今日のセレクト食はどっちにしましたか?」
「私はお肉にしたよ!」
「私もそっちにすればよかったな~!」
そんな何気ない会話が自然と生まれ、利用者様同士だけでなく、利用者様と職員様とのコミュニケーションが増えるそうです。
喫食量の変化以上に、「選ぶ楽しさ」が食事の時間をより豊かなものにしていると感じています。

肉と魚、どちらが人気?
ある施設のセレクト食は「肉」と「魚」の2種類から選んでいただく方式なのですが、人気は圧倒的に肉メニューだそうです。
実際は施設によって好みの違いはありますが、別の老人福祉施設でも、お肉メニューや今どき風の少しがっつりとしたメニューがお好きな利用者様が多いという声も聞くので、お魚よりお肉が好きな方が多いのかもしれません。
この傾向は、常食だけでなく、きざみ食など食事形態を問わず共通しているとのことでした。
お肉が人気ならば、「鶏の唐揚げ」と「とんかつ」のように肉メニュー同士で選べたら、さらに喜んでいただけるのでは…と考えたこともあります。
しかし、嗜好的に肉を食べられない方もいらっしゃるため、すべての利用者様が安心して楽しめることを考えると、「肉」と「魚」の2択が最も取り入れやすいように感じています。
また、魚メニューを考える際には青魚アレルギーへの配慮も欠かせません。
青魚を選択肢にすると、アレルギーのある方は自動的に肉メニューしか選べなくなり、「選ぶ楽しさ」を感じる機会が減ってしまいます。
そのため、魚メニューには白身魚などを取り入れることで、より多くの利用者様が公平にセレクト食を楽しめるよう工夫しています。
最後に…
セレクト食は、喫食量の増加だけを目的とした取り組みではないと考えています。
「今日はどちらにしようかな」と考える時間や、選んだメニューについて誰かと話す時間は、利用者様にとって大切な楽しみになります。
実際にセレクト食を実施した施設では、それをきっかけに会話や笑顔が増え、食事の時間がより豊かなものになっているように感じられます。
これからも、利用者様ひとりひとりが「食べること」を楽しめるようなセレクト食を考え、提供していきたいと思います。


