楽しく健康的に運動するために《管理栄養士のワンポイントスポーツ栄養学 その2》

食事で気をつけたいポイント

前回、スポーツ栄養学の一部についてご紹介しましたが、今回はその応用編をご紹介したいと思います。

前回は、必要な栄養素を運動前後に摂ることの必要性をお話ししましたが、必要な栄養素を実生活でどのように摂るのか、また効率的に摂るにはどうすればいいのか等、栄養素の組み合わせをメインに今日から始められるポイントをご紹介します。

今回は、炭水化物を摂る際のポイントです。「炭水化物抜きダイエット」や「糖質制限」などの言葉をよく耳にします。意外と知られていませんが、炭水化物とは、「糖質」と「食物繊維」を合わせたものの総称です。

20170308img_01

こちらは、ある食品の栄養成分表示です。先ほど、炭水化物は糖質と食物繊維から成るとお伝えしましたが、この表示だと…
糖質27.5g+食物繊維28.0g=炭水化物55.5gとなりますね。

この事から、食品を選ぶ際に炭水化物のところだけを見るのではなく、炭水化物の組成をチェックしてみて下さい。
炭水化物の約半分が食物繊維だなんて有り難い食材ですね。ちなみに、こちらの成分表示は「とろろ昆布」のものです。

炭水化物は体内で1gあたり4kcal(キロカロリー)のエネルギーに換わります。
そして、炭水化物は脂質、たんぱく質と比較して、最も早くエネルギーに換わり、エネルギー源として主たる栄養素です。

特に瞬発力が必要とされる運動では、いかに炭水化物(糖質)を補給し、エネルギーに換えるかがポイントとなります。
テニスの試合で、選手がエネルギー補給でバナナを食べる姿を見た事があるかと思いますが、バナナの糖質を素早くエネルギーに換えようとしています。(また、バナナに含まれるカリウムは、筋収縮の調整に必要なミネラルです)

20170308img_02

 

<炭水化物を摂る時のポイント>

食事によって体内に取り込まれた炭水化物は、酵素によって分解され、エネルギー換えられます。
その酵素の働きを促す働きとしてビタミンB1が必要になります。
したがって、炭水化物を摂る上でビタミンB1の摂取がポイントとなります。また、ビタミンB1は疲労物質である乳酸を体内にたまらないようにしてくれるので、運動後にはぜひ摂りたい栄養素です。

そして、糖質が多いとされるアルコールの分解にもビタミンB1が必要となります。
お酒をよく召し上がる方は、ビタミンB1不足にならないように気を付けて下さい。

 

<ビタミンB1を多く含む食品>
豚肉、うなぎ、たらこ、大豆、玄米など

では、炭水化物とビタミンB1をどのような食材、料理で摂ればいいのか、組み合わせの例をご紹介します。
20170308img_0320170308img_04

 

<例>
①パン+ポークビーンズ(豚肉・大豆)
給食などでよく登場した組み合わせではないでしょうか。
運動量の多い、成長期のお子さんにぴったりの組み合わせですね。
大人である私達の食生活にも取り入れたい組み合わせです。

 

②ひつまぶしorうな重(ご飯+うなぎ)
昔から、夏バテ防止や元気をつけたい時に「うなぎ」を食べる風習が日本にはありますが、ちゃんと理にかなった組み合わせですね。
20170308_05

 

③麺類 (カレーうどん、肉うどん、ミートソースなど豚肉の入っているもの)
麺類と豚肉の相性は良く、メニューのバリエーションは豊富にあります。
麺類でトッピング出来るものは、コンディションに合わせてトッピングを選択してもいいかもしれません。
ただし、麺類の中には油を使っているものや、塩分も多いので、麺類の摂りすぎには気をつけましょう。
20170308img_06

 

④お好み焼き(小麦粉+豚肉)
小麦粉の約75%は炭水化物から成りますが、小麦粉を使ったお好み焼きに豚肉を入れる事で、より効率的に炭水化物をエネルギーに換える事が出来ます。また、お好みの具に桜海老やチーズを加える事でカルシウム補給も出来ます。成長期のお子さんのおやつや、運動後のメニューにも最適です。
20170308img_07

 

⑤じゃが芋のたらこ炒め
じゃが芋の約17%は、炭水化物から成りますが、ビタミンCやカリウムなども含み運動後にも摂っておきたい栄養素を含む食材です。
こちらのメニューは、じゃが芋を短冊状に切って炒め、じゃが芋がしんなりしてきたら、たらこ、塩、こしょうで味を整えるだけの簡単レシピです。
お弁当の一品にも、お酒のお供にもオススメなおかずです。

 

このように、難しい調理をしなくても、メニューの選択や、食材の組み合わせで、炭水化物とビタミンB1を一緒に摂る事が出来ます。
20170308img_08
たらこの白和え

20170308img_09
豚肉と南瓜の生姜焼き

 

<まとめ>

運動するだけでなく、通常の生活をする上で炭水化物からのエネルギー補給は欠かせません。
エネルギーを摂りすぎると、体重増加や糖尿病などの生活習慣病の一因になりかねませんし、足りなくても体の不調を引き起こしたり、筋肉の分解により筋肉量の減少にもつながります。

ご自身の適量を把握するのが難しいところではありますが、極端な糖質(炭水化物)制限や、過剰摂取には十分に気をつけて下さい。
そして、ご本人にとって良いコンディションの生活の中で楽しく健やかに運動を続けて頂ければと思います。

今回は、炭水化物をどのように摂れば効率よくエネルギー補給になるか、ビタミンB1をポイントにお伝えしました。
次回は、たんぱく質の効率的な補給方法をご紹介したいと思います。

 

管理栄養士 N.I

(参考文献)
吉岡有紀子(2014)『栄養の基本と食事の教科書』池田書店
田口素子(2007)『戦う身体をつくるアスリートの食事と栄養』ナツメ社
竹並恵里(2016)『進化系!筋肉男子の栄養学』ベースボール・マガジン社

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事